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東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻に合格しました

はじめに

色々あって院試に合格しました。東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻2016年度の夏入試です。じぶんが受けるときにほとんど情報がなくて困った覚えがあるので,あとから受ける人のために色々と情報を残しておこうと思います。受けたのは自大の内部進学(早稲田大学 基幹理工学系研究科 情報理工・情報通信専攻)と東大だけで,両方とも合格をいただくことができました。 内部進学についてはたくさん情報が揃っているので今回ここでは書きません。

受験先の選択について

大学院,特に他大学を受験するはたくさんの選択肢があります。専攻を決めるのも一苦労だし,専攻を決めたあとも受験科目や研究室など,たくさんのことを じぶんで決め なければなりません。 たとえばぼくは情報科の人間でしたが,東大だと情報理工学系研究科に加えて,学際情報学府や工学系研究科,新領域創成科学研究科を受験される方もいるでしょう。とはいえなかなか受験先を選ぶのはむずかしいので,ぼくはこんな感じの指標を用いたぞというのを以下に示しておきます。

  • 自身のやりたい研究と一致しているかどうか
  • 専攻の内部率/外部率
  • 必要な科目
  • 問題との相性

などでしょうか。それではひとつずつ説明していきます。

自身のやりたい研究と一致しているかどうか

自身が学部で所属していた研究室にそのまま進むのと比較すると,他大学の院試を受け直すということは「もう一度研究テーマを決める必要がある」ということになります。院試の出願をする段階でじぶんの将来像や研究テーマが描けている人は少ないと思いますが,HPや説明会,研究室訪問などで自身のやりたい研究と合っているかどうかよく考えるといいと思います。 本当にやりたい研究をしたいのか,いわゆる学歴ロンダ,院ロンダをして「東京大学大学院」の学歴をほしいだけなのか,というのをよく考えないといけません。

専攻の内部率/外部率

東京大学の大学院の入試は一般にはむずかしいと思われがちです。厳しい学部の試験をくぐり抜けてきた内部生と戦わなければいけないからです。しかし,そんな東大にもいわゆる「入りやすい研究科」というのは存在します。 「直属の学科がない研究科」が基本的には「入りやすい研究科」ということになりそうです。これはどういうことかというと,たとえば昔からある研究科と専攻は 工学部電子情報工学科←→情報理工学系研究科電子情報学専攻工学部システム情報学専攻←→工学系研究科システム創成学専攻 といった感じですね。 しかしながらこういう対応を取ってない新設の研究科も多くあります。創造情報学専攻もその1つですし,新領域創成科学研究科や学際情報学府などがそこにあたるでしょうか。 このあたりこのあたりの情報を見ておくと,なんとなくわかるかもしれません。

必要な科目,問題との相性 については以降で述べます。

院試までのスケジュール

  • 4月: 外部受けるかと思う
  • 5月: 教科書を買った
  • 6月: どの専攻を受けるか決める
  • 7月: 自大の院試と並行して勉強する
  • 8月:
    • 1週目: TOEFL-itpを受ける
    • 2週目: 過去問をちょっとだけ解く
    • 3週目: 院試を受ける
      • 1日目: 筆記(一般教育科目)
      • 2日目: 筆記試験(専門科目)
      • 3日目: 口頭試験

という感じでした。概ね分野がかぶっていたので自大用の勉強はあまりせず,東大用の勉強をしつつ足りないところを補う,という感じでした。勉強時間だとおそらく3週間やったかな?というくらいです。

基本的な勉強方法としては,かなりギリギリになるまで過去問は解かず,教科書を読んでいました。あまりにも解けなさすぎて嫌になったのと,創造情報学専攻はそこまで細かい知識を聞いてくるわけではないので,ざっと頭に入れておくとよいだろうと思っていたのとです。

おそらく自大の中で他大受験をする人はそれほど多くはないと思うので,スケジュールや計画はある程度ガバガバでもいいのできっちり把握しておきましょう。英語受け忘れた……なんてことは避けたいです。

筆記試験について

いちばん大事そうな筆記試験について詳しく書きます。創造情報学専攻の夏入試で必要な科目は英語(TOEFL),数学orプログラミング,専門科目の3つです。 英語:数学orプログラミング:専門科目 = 1:1:2 の重みづけがされているという噂がまことしやかに囁かれていますが,本当かどうかはわかりません。

外国語(英語)

英語はTOEFL-iBTのスコアシート提出が基本的であり 「やむを得ない場合のみ」東京大学で集団受験するTOEFL-ITPのスコアを利用することができる ,と書いてありますが,願書にマルをつけ,行って受けるだけです。

  • TOEFL-iBT
    • 受験料が高い(2万円くらい)
    • Listening, Readingに加えてSpeaking, Writingがある
  • TOEFL-ITP
    • 受験料は大学院の受験料に含まれている
    • Listening, Readingのみ

という感じです。ぼくは東大でTOEFL-ITPを受験しましたし,かなり多くの人がTOEFL-ITPを受けて英語のスコアとするようです。英語は元からそこそこできたので,まったく対策をしないまま受験の2日前くらいに以下の本をさっくり読みました。問題形式や解答のポイントを簡単におさえることができます。

TOEFL(R) テストITP 総合スピードマスター入門編

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院試において英語は軽視されがちですが,それなりに対策すると他の人の1.5~2倍の点数を取ることもむずかしくはないため,やっておくといいと思います。差がつきやすいです。 ただし一般教育科目や専門科目がある程度できていれば「英語が悪いから落とされる」ということはないようです。きちんとした例なのかはわかりませんが,TOEICが400点台の早稲田の同期は電子情報に受かっていました。

一般教育科目(プログラミング)

創造情報学専攻のみ,出願時に数学またはプログラミングを選択して受験することができます。ぼくは数学がそれほど得意ではなかったし,復習するのも大変だったのでプログラミングで受験することにしました。年による難易度の差がそれほど大きくなく,そこまで難問奇問は出題されないため,対策しやすいと思います。

簡単なレギュレーション

  • 大問1つで構成。例年(1)~(6)くらいまである
  • プログラミング言語は自由。
  • インターネットへの接続は不可だが,マシン内のライブラリ,コード片は自由に使用できる。
  • リファレンス(物理)を1冊に限り持ち込み可能

本番は2.5時間かけてがりがりコードを書き,コード集を各自に配られるUSBメモリに入れ提出。その後マシンを置いたまま退室し,午後に1人ずつ動作チェックと試問を受ける,という形で進みます。

プログラミング試験の対策

競技プログラミングはそこまでやったことがなく,慣れていた言語ということでRubyと迷った末にPython2で受験することにしました。リファレンス(物理)は持ち込まず,dumpしたPython2.7のリファレンスを参考にしました。 例年競技プログラミング系のむずかしい問題がそこまで多く出題されることはなかったため,Project Eulerを1日1題ずつくらい解いていました。ただそこまで対策としてはよくなかったと思います。本番も4割くらいしか解けませんでした。 ふだんプログラミングするときは,書き方がなんとなくわからなくなったらぐぐる,という感じでだらだら書いていました。しかし本番のレギュレーションはそれと大きく異なっています。そのため

  • 時間を決めて解く
  • Googleではなくリファレンスを参照して解く

あたりのことを意識して対策を行うとよさそうです。また普段ファイル入出力に触れることはあまり多くありません。 .txt.csv の入出力は簡単に見ておくか,まとめシートを作っておくと時間の節約になると思います。書籍ですが,かの有名な蟻本が必要なほどではないので,いわゆるTLE本をやっておくのがいいと思います(ぼくはやりませんでしたが)。後で述べるアルゴリズム問題の対策にもなると思います。

プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造

プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造

専門科目(創造情報学)

続いては専門科目についてです。創造情報学専攻の夏入試では専門科目として,創造情報学以外にもコンピュータ科学,数理情報学,システム情報学,電子情報学,知能機械情報学のうちいずれか1つを選んで専門科目とすることもできます。ぼくは創造情報学で受けました。理由としては,

  • ソフトウェア関連の問題が多い
  • 知識を問う問題が少ない
    • 幅広い分野への基礎知識をベースに答えていく問題
    • きちんと頭を使って解けば答えが出る問題

などが挙げられます。先にも挙げたようにアルゴリズムや情報システムに関する問題が多く出題されており,逆にハードウェアに関する問題はそれほどまで多くはありません。要項にも

ソフトウェア・アルゴリズム,コンピュータハードウェア,情報システムなどに関する問題が出題される.3問解答する.

と書かれていますね。ぼくはアルゴリズム,ハードウェア,(後で述べる)語句説明の大問3問を解きました。

また上にも書いてあるとおり きちんと頭を使って解けば答えが出る問題 が多く出題されるように思います。見たことのない設定の一見するとむずかしそうな問題でも,よく読むと簡単じゃんみたいな問題が多かったように思います。このあたりは東大の学部入試の問題にも少し似ていますね。

アルゴリズム

ぼくは競技プログラミングをそこまでちゃんとやったことはありませんし,アルゴリズム系の問題はどちらかというと苦手でした。他の様々なブログを読むとオススメされていた以下の本をやりました。薄い割にきちんとまとまっていていい感じです。 この本を1冊きちんと読み込めば,どんなアルゴリズムが出てきても大体はどうすればいいかわかると思います。この本で基本的な概念を抑えつつ,一般教育科目(プログラミング)の勉強と合わせてがりがり実装する,というのがいいでしょう。最初の方は擬似コードをきちんと手書きしていましたが,途中からめんどくさくなってやめました。

データ構造とアルゴリズム (新・情報 通信システム工学)

データ構造とアルゴリズム (新・情報 通信システム工学)

アルゴリズム関連の問題は,一般教育科目(プログラミング)にも関連しますし,毎年ほぼ必ず出題されるのできちんとやっておくといいと思います。必須です。

ぼくはやりませんでしたが,アルゴリズムイントロダクションなんかを読んでおくのもよさそうです。

アルゴリズムイントロダクション 第3版 総合版 (世界標準MIT教科書)

アルゴリズムイントロダクション 第3版 総合版 (世界標準MIT教科書)

  • 作者: T.コルメン,R.リベスト,C.シュタイン,C.ライザーソン,Thomas H. Cormen,Clifford Stein,Ronald L. Rivest,Charles E. Leiserson,浅野哲夫,岩野和生,梅尾博司,山下雅史,和田幸一
  • 出版社/メーカー: 近代科学社
  • 発売日: 2013/12/17
  • メディア: 大型本
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ハードウェア

ハードウェアはあんまり得意ではなく,できれば捨てたかったのですが,そうもいかないので以下の2冊の教科書を読みました。

コンピュータアーキテクチャ

コンピュータアーキテクチャの本にはかなり助けられました。非常に詳しく書いてあるし,章末問題が解説も含めかなりきちんとしているので,1冊丸ごと読むとコンピュータアーキテクチャはほとんど問題なくなると思います。コンピュータアーキテクチャに加えて,いわゆるオペレーティングシステム的な話まで広げて書いてありました。

コンピュータアーキテクチャ (電子情報通信レクチャーシリーズ)

コンピュータアーキテクチャ (電子情報通信レクチャーシリーズ)

論理回路

論理回路はみんな勧めていた坂井修一先生の教科書をざざざっと読みました。コンピュータアーキテクチャの本もですね。余談ですが著者の坂井先生は創造情報学専攻の教授です。当日に解いた問題の構成がほとんどこの教科書の章と同じで驚きました。もしかしたら坂井先生が問題を作られていたのかもしれません。 組み合わせ回路からの出題が多く,順序回路はあんまり出題されないイメージです。

論理回路入門

論理回路入門

用語問題

過去問を見ればわかるのですが,8つの用語が書かれていて,そのうち4つを選んで説明しなさい。といった形式の問題が毎年出ます。

これは色んなところでも言われているのですが,対策としてはひたすらwikipediaを見ていました。とはいえ,出そうな範囲はなんとなく絞れてきます。過去問を解きつつwikipediaで調べて,その項目の中にわからない単語が出てきたらまた調べる,といった具合です。wikipedia各項目の「概要」をまとめるといい感じです。個人的にはここは点取りどころだなと思っていました。

得点開示

東大院試の得点は,情報理工学系研究科の場合は情報公開室というところに行くと開示することができます。もろもろの手続きで1ヶ月近くかかるので困ったところなのですが,せっかくなので開示することにしました。

外国語科目(TOEFL-ITP): 547/677
一般教育科目(プログラミング): 60/200
専門科目: 208/300

プログラミングがなんともひどい点数ですね。むずかしかったから仕方ないかなあという気もするのですが。このあとの配点の重みづけが謎なところですが,大体5~6割くらいは取れたかなという感じだったので,採点はそんなに厳しいということはなさそうです。