たいむかぷせる2

何年か後に見なおして頭を抱えてくなるものたちのあつまり

エンジニアを目指す学生の励まし方

はじめに

  色々あって,ここ数年間は「エンジニアになりたい学生」と多く触れ,そして励ましてきました。新卒採用やインターンシップ採用の選考に関わっていたこともあります。悲しいことに学生のみなさんはさまざまな情報に踊らされ,焦らされ,煽られてしまっています。特にTwitterやブログでは,なんとか生き残っていた人たちの生存バイアスばかりが目立ちます。人事は会社ごとに言ってくることが違うし,いったいなにを信じればいいのかわからなくなっていることでしょう。そんな学生のみなさんの不安を少しでも払拭できればいいと思って,ひとりひとりとお話して励ましてきたことを今回こうして文章にまとめています

  この文章がエンジニアになりたいけれど,なんとなく不安を抱えている学生の方々の助けになればとてもうれしいです。もちろんこの文章は私が所属する企業を代表する意見ではありませんし,あくまで私が考える「こういうふうに考えると気持ちが楽になりますよ」をまとめたものだということをご理解ください。

技術を好きでいよう

  私が新卒で入社したクックパッドでも,それ以外の会社で,もとにかく「技術を好きであること」が求められています。新卒で就活をしていたときはなんとなくそうなんだろう,くらいしか考えていませんでした。しかしこれはとても重要なことだったのです。

  エンジニアという仕事は,他の仕事に比べると楽しいことが多いです。しかしもちろん仕事なので楽しいことばかりではありません。技術的負債に立ち向かうとき,わからないバグの調査をするとき,どうやって設計したらわからないときなど,つらいときだってあります。そんなときに技術が好きでないとやっぱり折れてしまって,エンジニアが楽しくなくなってしまいます。

  そればかりでなく,エンジニアリングで解決できる課題が増え,必要とされる知識や経験もどんどん複雑になっています。そこに追いついて第一線のエンジニアとして働き続けるためにはやはり技術を好きでないと続かないのです。

  技術を好きになってしまえば,勝手に楽しくなってどんどん自分で学んでいきます。自分で学ぶための情報はインターネットにいくらでもありますし,体系的な知識を身に着けたければ本を読んでもいいでしょう。とにかく技術を好きになって没頭できる。そんな人がぐんぐん成長していくのを,私は何人も見ています。

ユーザーを好きでいよう

  エンジニアとして最も悲しいことはなんでしょうか。これに正解なんてないんですが,私は「使われないものをがんばって作ってしまうこと」にあると考えています。もちろんこれにはエンジニア個人の能力以外の部分も大きく関わってくるのですが,長い時間をかけてがんばって作ったものが結局使われないのは,今でもものすごく悲しいです。

  それを防ぐためにはどうするかというと,やはりユーザーのことを考え続けるしかありません。自分が作ったものがどう使われるか,どういう価値を生み出すのかを常に考え続けることです。これはtoCでもtoBでもあまり関係がありません。エンジニアが作ったものには,常にユーザーが存在するからです。技術が好きで,ユーザーが好きな人は,みんな本当に楽しそうにエンジニアをしています。

成長するのが仕事

  エンジニアになりたい学生が落ち込んでしまう大きな原因のひとつに「周りと比べすぎてしまう」ことがあるでしょう。Twitterを見たり仲間を見たりするたびに,みんな自分よりも優秀な気がして落ち込んでしまう。

  しかし実際の新卒採用では,実は現時点での能力はそこまで見ていません。今は学生の技術力も昔とは比べものにならないほど向上していますが,それでも社会人とは違います。また学生が考えるほど,学生同士の差は大きくはありませんでした。

  そんな中で我々が何を重視しているのは,これからどれくらい成長するかです。すぐに働ける即戦力を求める中途採用とは違い,新卒採用はじっくり成長してくれる人を求めています。

すでにエンジニアリングをはじめていてほしい

  とはいっても,これから成長できることをどうやって示せばいいのでしょうか。そのために私は「すでにエンジニアリングをはじめているかどうか」を重視しています。これからエンジニアとしてのキャリアを歩もうとしているのなら,もうすでになにかものづくりをはじめていてほしいのです。

  「これからはじめて成長したい人」と「すでにはじめていて成長途中の人」のどちらが信頼できるかなんて一目瞭然ですよね。エンジニアになろうとしているのなら,ちょっとインターネットで検索してしまえば,記事にも教材にもいくらでもアクセスできます。こういった姿勢があるかどうかで,口だけではなく本当にエンジニアを目指しているのかを見ています。ものすごいポートフォリオやすばらしいインターン経験があるに越したことはないですが,なんでもいいんです。まずははじめること。これは本当に大事なことです。

面接との向き合い方

  まずお伝えしたいのは,面接官の中にあなたを攻撃したりいじめたりしたい人はいないということです。限られた時間の中で「この人と一緒に働けるだろうか」「これからも成長してくれるだろうか」をたしかめています。面接に落ちるんじゃないか,嫌な思いをするんじゃないか,と不安なことはとてもよくわかります。私もそうでした。

  そういった不安を抱えながら面接をする中で,自分を大きく見せたり,わからないものをなんとかひねり出して答えたりする方もよく見ます。でも面接官側からはそういう態度は結構わかってしまいます。少なくとも私は,わからないことをわかったように答えるよりも,素直にわからないといえる人を評価します。

  私たちは学生としてたくさんの試験を受けてきたので,面接にも唯一の正解があると考えてしまいます。けれど必ずしも唯一の正解がない質問も,私はたくさんします。そしてどうか,質問にすらすらと答えられなかったことを重く考えすぎないようにしてください。面接官はそういったとき,なんとかしてヒントを出そうとするものです。もともと緊張していることにも加えて,すぐに答えが思いつかない質問が投げかけられたとき,頭が真っ白になってしまう人はたくさんいます。そんなときは「すぐに答えられないので少し時間をください」と告げてみましょう。緊張していてむずかしそうに見えた質問も,少し考えれば実はわかることも多いのです。ぜひリラックスして,自分の持てる100%の力を面接で発揮できることを願っています。

選考結果

  とはいっても,受験した企業すべてに受かる人はほとんどいないと思います。多くの人が選考に受かったり落ちたりして,自己肯定感が増えたり減ったりすることでしょう。しかしどうか,選考結果を重く考えすぎないようにしてください。エンジニアに限らず,就活というものは今までの人生のすべてを賭けて挑んでいるようにも見えます。そうしてこれから長い時間をかけて働く企業に落ちてしまう。すごく悲しいことです。けれども選考結果はあなた自身の能力や人生を否定しているわけはありません。これをどうか心に留めておいてください。

  選考というのはむずかしいもので,どうしても合う合わないの問題が出てきます。あなた自身はすばらしい人間であることはわかっているのですが,どうしても別の組織の方が仕事を楽しめると思って落とす場合です。現時点でのあなたが,現時点での我々の組織に合わなかっただけなのです。そこには採用数や組織の成長段階や規模といった複雑な要素が絡み合ってきます。

  どうしても気になる場合は,選考結果とともに「不合格の理由」を聞いてみてください。最近は選考結果とともに送付してくる企業も増えてきたと聞きますが,実は聞くと教えてくれる場合も多いです。ブラックボックスになってしまいがちな選考から,少しでもフィードバックを得られるといいはずです。

就活に過学習しない

  就活を迎える学生は不安で,焦っています。周りばかり就活を成功させていて,うまくいっているように見える。けれど,どうか就活に過学習しすぎないようにしてください。これは私の苦い記憶もかなり呼び起こされるのですが,いくつ内定を持っていたところで,行ける企業はひとつしかないのです。

  そして学校の勉強をきちんとやりましょう。自分で勉強したり,外部でインターンしたりしすぎないようにしましょう。特に情報系の学科にいる方は,すべての知識が「いいエンジニアになる」ために活きてきます。私も仕事をしながら「もっと授業をちゃんと受けておけばよかった」と何度思ったかわかりません。修士生活って結局なんだったのかな - たいむかぷせる2 なんて記事を書いてしまったのですが,最新の技術を論文で調べて実装して実験するといった一連の流れに慣れておくことは,きちんと役立ちます。近年の早すぎる情報化社会では,書籍が出るまで待っていられないことだってたくさんあります。

  インターンも楽しいですが,社会人ごっこに貴重な学生生活を費やしていいのかどうか,ぜひしっかり考えられるとよいはずです。会社をよく知る機会でもあるのですが,どうしても時間がかかってしまいます。これは私自身の後悔がかなり多く含まれているのですが,もっとじっくり本を読んだり,旅行したり,考えたりしてもよかったはずです。どうか学生のうちでしかできないことを犠牲にされないよう。

さいごに

  エンジニアになりたい学生を応援するはずが,最後の方は私の後悔を解消するための文章となってしまいました。けれどこれだけは自信を持っていえますが,私は今も昔も,とっても楽しく元気にエンジニアをやっています。ぜひこの文章を読んで,一緒に働く仲間が増えますように。応援しています。